嘔吐

作家になりたい統合失調症の女が色々考えるブログ

瀉血中の喜劇

わたしはメンヘラである。
統合失調症を患っており、どこからくるのかわからない強い不安や、時たま聞こえてくる幻聴を薬でどうにかしておさえこんでいる状態である。
わたしの不安感は相当に強い。今飲んでいる抗不安薬は4種類。デパスワイパックスリボトリールにヒベルナ糖衣錠。出せる抗不安薬はこれだけでマックスだ、これ以上は処方できない、というのが医師の診断だ。
これだけの薬を飲んでいても、わたしの不安感は消えない。
毎日を恐怖の中に過ごしている。メンヘラやめてえな。そう思いながら。

書いている人間がこんななので、どうしても記事が薄暗くなりがちだ。
統合失調症は治らない。寛解を待つしかない。けれど、どうしたって寛解する兆しはない。
だったら、もう、諦めて、メンヘラ街道を突っ走ることにした。
メンヘラというコンテンツを作り上げ、メンヘラ芸人になろうということだ。
内容は薄暗いかもしれないが、極力明るい文章を書くことにしたい。

前置きが長くなってしまった。
この記事のテーマは、タイトルを見てもらうとすぐにわかるだろう。
瀉血中の喜劇」ーーなるべく明るく書くので、よかったらこの先も読み進めてほしい。

わたしはメンヘラだ。
それも、愚かしいメンヘラだ。わたしは自傷行為をしているメンヘラなのだ。
それも、リストカットではない、瀉血だ。なぜリスカじゃないの?と聞かれれば、傷が残るのが嫌なのだとわたしは答えるだろう。
しかし、瀉血はそこまで痕が残らない。この点に魅力を感じて、わたしは瀉血を定期的にしている。
赤い血を見ると精神が落ち着くのは、メンヘラの共通認識なのだろうか。わたしも、赤い血を見ることで、心の安寧を得ている。

その日も、わたしは瀉血をしようと、いそいそと浴室で準備をしていた。
駆血帯にニードル16G。これさえあれば、瀉血ができる。
わたしは、「恋に落ちて〜Fall in Love〜」を聴きながら、腕に駆血帯を巻いた。痛いくらいにきつく肌を締め付けた。
そして、ニードルを腕に刺した。途端、溢れ出る血。わたしの精神は酷く高揚していた。
その時のわたしは、お酒も飲んでいたし、デパスワイパックスのODもしていたので、なおさらテンションが高かった。
わたしは調子に乗って、何回目かの「恋に落ちて」を聴きながら、鼻歌を歌っていた。
だが、わたしは異変に気づく。
身体が酷く寒いのだ。手の震えが出てきた。気のせいか、視界も狭まっているかのように感じる。

もしかして、これ、ヤバイんじゃない?

そう思ったわたしは、即座に携帯電話を手に取った。
そして、検索をかけまくった。瀉血で気分が悪くなった場合はどうすればいいか、何度も調べた。
わたしは完全に正気を失っていた。なにをするにもまず、腕に刺してあるニードルを抜けばいい話だ。だが、その時のわたしには、正常な判断ができなくなっていた。
どんなに検索しても、この身体の異常をどうにかしてくれるページはヒットしない。
いよいよ視界が暗くなってきた。

ヤバイ、死ぬ!!!!!

浴室は血まみれだ。その中に倒れ臥すわたし。完全に殺人現場である。
携帯電話から手を離し、わたしはそこでようやく針を抜けばいいことに気がついた。
わたしは大急ぎで針を抜き、朦朧とした視界の中で、鉄分を補給しようと浴室からふらふらと出ていき、10円玉を口に放り込んだ。鉄の味がした。
10円玉で鉄分を補給しようとするわたしは完全にキチガイだった。
10円玉は銅である。鉄ではない。そんなことにも気づかずに、わたしは一心不乱に10円玉を舐め続けていた。 10円玉を口の中に入れたまま、わたしは血まみれの浴室の後片付けに入った。
全ての後始末を終えて、わたしはソファーの上に倒れ臥した。限界だった。
そこで再認識した。

血液は、大事だ。

そんな当たり前のこともわからないなんて一体お前は何年生きてきたんだ、という話である。 ぐらぐらとする頭で、わたしは鉄分、鉄分、とうわ言を言っていた。
やがて帰ってきた父親に、その現場を押さえられ、もれなくニードルは全て取り上げられた。
それから数日は、ふらふらとしたまま過ごした。ひたすらにニラを食べ続けた。

わたしは、死ぬことは難しいことだと思っていた。
しかし、案外簡単なことかもしれないのかと、今回の一件で学んだ。
わたしはまだ死にたくないので、助かってよかったと思っている。病院にお世話にならずに済んでよかったと思う。
まあ、こんな風に自傷行為に及んでいることを医者にひた隠しにしているわたしは、これからも穏やかな統失患者としてしれっと医者に通おうと思っている。

その当日はエライ目にあったし、神を恨んだが(完全に自業自得である)、今となっては笑い話だ。
これからも瀉血をやめる意思はないし、また同じことをやらかすような気はしている。
でも、この一件でいかに血が大切なのかを思い知った。これからは、もっとうまくやろうと思っている。

最後に。
わたしが鉄分補給に舐め回した10円玉は、洗った後にしれっとスーパーで使った。
あの10円玉を使う人間には申し訳ないことをしたと思う。
すみませんでした。

今日の話も少ししておこうと思う。
今日のは医者の日だった。いつも通り診察を受けて、薬をもらって帰ってきた。
薬は減る兆しを見せない。今後、寛解するかも怪しいところだ。
まあ、その時はその時で、考えればいい。わたしは、血を抜き続けるという自殺の手法を学んだのだから、どうしようもなくなったら死ぬだけだ。
ああ、瀉血の話をしたら瀉血したくなってきた。明日にでもやろうか。
いい加減懲りろ。自分にそう言ってやりたい。 しかし、メンヘラは懲りないのである。
わたしとは、愚かな生き物なのである。
そんなわたしの、瀉血中の喜劇だった。

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